■金融不況に伴う派遣切り問題 (No.101)
昨年末から話題になっているのが不況に伴う派遣切りの話題である。年末から正月にかけてのテレビでも連日,この派遣切りに関する報道が流れ続けている。そもそもこの問題の根本はどこにあるかを考えてみる
自動車業界の不況に伴う派遣切り
我々の周辺にもジワジワ不況の波が襲ってきている。季節工など正規社員でない派遣型の人たち約3万人が職を失い路頭に迷うようなことが起こりつつある。今年の3月までには8万人以上が職を失うという。そのため,与野党からそうした人々に対して支援をし,この年末の年越しができるように派遣村から一時的に厚労省の体育館を貸すなど応急処置がとられている。
その中でも自動車業界の低迷からくる季節工の雇用期間半ばでの首切りが大きな問題になっている。(自動車業界だけでなく,他の業種も同じであるが,規模が大きい)そもそも季節工は限られた期間の要員で,その期間が過ぎれば終わりと云う契約になっている。だから,期間が過ぎたのに延長を求めるのは,契約上の問題は法律上はないはずである。期間半ばの場合は問題があるが,契約上がどうなっているかにもよる。
そもそも昔から季節工はあったが,出稼ぎ的なものであった。製造業に派遣が認められたのは2004年で,1999年の派遣自由化を製造業まで拡大したもので,それまでの「偽装請負」の蔓延に対する対応策だった。そうした労働者のはっきりしない立場と無権利状態に甘んじていたものを解消する役割もあったのである。ただし,同じ職場の中に,請負と派遣が混ざる問題もあった。
しかし,現在の派遣切りは派遣だけを切っているのではなく,請負も含めてである。問題視されているのは,派遣切りをしている大手会社と切られている派遣者との間に契約関係がないため,一番切りやすい作業者を切っていることである。直接雇用契約がある社員はもちろんのこと,パートなどは今のところ契約を守っている形になっている。つまり,法律的には違法をしているわけではない。ただ,間に入っている派遣会社が社員として他の働き口を見つけてくれるかといったら,現在の環境下ではとても無理で,派遣先で切られたら行くところがなくなって住むところもなくなってしまうことである。これに対して与野党一致で対応策を検討している。
また失業率との関連もよく見ておかなければならない。それは,失業率が高かった2004年以前(失業率 5%台),失業者対策として雇用を促進するものとして派遣労働を製造業まで拡大したものだった。つまり,失業よりも派遣として安い賃金でも労働に就けた方がよいとの考え方だった。その当時から,派遣労働者は正規従業員と違って,解雇されやすい立場になり,不安定になるとの危険性は問題視されていた。その当時の議論は,それでも失業よりは良いのではと,労使双方にとって良い柔軟な雇用制度として成り立ったものだった。そして今日のような全産業が不況に落ち込む事態は想定されなく,解雇されたとしても,次の職場が容易に見つかるとの考えだったようである。事実,2004年以降の失業率は,景気回復と共に下がって行った事実がある。
だから,派遣労働者の失業が増えたから,製造業への派遣労働を禁止して2004年以前の元に戻すべきとの意見もあるが,それは極端すぎるとの意見が財界から出てきている。つまり,企業はグローバル化してしており,派遣労働の規制が強化されると,企業は自ずと安い労働力を海外に求めざるを得なくなり,ますます失業率が上がり,日本の空洞化が加速されるからである。
セーフティネット
こうした派遣切りの問題を,製造業に派遣労働を解放したことそのものは問題ではなく,今日のような事態を予測して,解放と同時にセーフティネットを確立しておかなかったことが問題なのだ,と云う意見もある。つまり,世界各国と比較すると,殆どの国がセーフティネットと称して,失業したときの賃金の補填,及び次の職場に就ける訓練などが確立しているという。それに対して,日本のセーフティネットは全くないのが実態である。個人に対しては全く何も無い状態で,中小企業などの連鎖倒産防止などにセーフティネットがあるようである。
年末から年始にかけての派遣村(年末,年始に掛けてお役所が休みになるので,その臨時対応策として取られたもの)が話題になり500人以上が駆けつけパンク状態になり,与野党云わず,その実態から緊急対応策を迫られているのである。確かに,テレビなどの報道で見る限りでは,これが日本国かと思われるほどひどい状態である。小銭しかない状態で,住むところを追われてしまった人々,職を探していても年齢制限などで受け付けて貰えない人々,路頭に迷う人々が映し出されている。
格差社会以前の問題である。憲法で日本人として最低限の生活は保証されているはずである。生活保護などがどのように扱われているかよく知らないが,日本人として住むところもない状態の人が多くテレビに映し出されると云うことは,氷山の一角であってそのバックには多くの人がそのような目に遭っていると云うことである。それも,一生懸命仕事をしていた人が,不況の影響でいきなりどん底に落とされると云うことは,何か日本人として間違っているのではないかと感じる。
企業にも問題はあるが,国として政治はどうなっているのかと疑問を抱く人も多いのではないだろうか。個人の問題と見ているのだろうか?政治家がテレビでいろいろやりとりをしているが,どうも庶民感覚とはかなり食い違っているように見える。人が生きるか死ぬかと云った当に災害である。災害に対する対応は有無を云わず,スピーディにやらねばならないことをどれだけ判っているのだろうか?
企業も,派遣者も,共に困っている。何か良い手立ては無いものか?
ますます悪化する企業業績,このままでは終わらないのでは?
ますます厳しくなく激動の2009年,明るく前向きに頑張る力を持とう
2009年も,さらに新たなチャレンジを!!
[Reported by H.Nishimura 2009.01.19]
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