■多様性 3(No.096)

  即戦力を求める社会

企業に於ける多様性はいろいろな形で取り組みがなされてきている。日本企業は昔,少なくとも1980年代までは,一旦企業に入ると定年までずっと勤めると云うのが一般的だった。会社を変わること事態どちらかと云えば不利になることが多かった。しかし,昨今ではそうではなくなってきている。ジョブホッピングといって,転職を繰り返して,自分の価値を高める人もいるが,そこまでする人ではなく,通常一般に,企業が中間採用の形(通年採用とも云われいるが)を取り始めたのは,即戦力になる優秀な人材を集めることで,これまでの同じ仲間同士の仕事のやり方に活性化を図ろうとするもので,多様性になる効果を狙ったものである。

昨今の会社情報では,専門性を重視した内容を中心に,いつでも会社側が求める人材(専門性)が居れば,いつでも採用するという姿勢である。しかし,必ずしも良いことばかりでなく,出て行かれる職場にとってはいろいろ育成してきた人がいきなり抜けるのだから大きな痛手になる。これは企業にとってもマイナスになることがある。そうしたことに,大企業では,会社内で専門性が活かせる職場に変わることで会社としてマイナスを減らそうとする試みもされている。職場単位ではプラス,マイナスで会社としては本人の能力が現職場より活かせるのならばプラスであるとの考え方である。こうしたことも,従来の会社組織では考えられなかった仕組みで,多様性の面では職場の活性化には大いに役立つものである。

一方,考え方によっては,即戦力と云った面はあるものの,人材育成と云う面からは手を抜いたやり方で,本来の会社の使命からは外れる部分もある。個人の権利を認めることは必要であるが,育成すること無しに他社で育てて貰って引き抜くとは如何なものかと云う気がしないではない。これが行過ぎると,人材育成そのものに会社自身が怠るようになる可能性がないではない。これでは,日本全体として人材育成が弱体することで,決して望ましいことではない。多様性は良い面は大きいが,こうした問題もあることを忘れてはならない。

  女性の活用

また,女性の活用も多様性の代表的なものである。これまで管理職と云えば男性で,稀に女性が管理職になっていることもあったが,男勝りや或いは男性と互角以上に仕事ができるような女性しか居なかった。しかし,1999年に大きく改定された「男女雇用機会均等法」を基に,21世紀に入って大企業中心ではあるが,女性の地位向上を目指した活動,特に女性管理職を一気に増やす活動が行なわれてきている。今まで,女性だからと云うことで,管理職的な仕事は労働条件上残業を始めとして厳しいなどの配慮もあって避けることで,納得性が保たれていたように見えたが,女性の職場進出が今日のように,殆ど男女の差がなくなり,残業なども気にせずやる女性が増えてきて,女性管理職も当然となったように見える。

しかし,法改正のすぐ後の女性管理職は,無理やり管理職にさせる,恰も男女逆差別に近い状態も見受けられた。女性だから,管理職になりやすい風潮である。人事などは,女性を管理職にさせることで一つの成果を出しているかのごとくの振る舞いが見受けられたことも事実である。管理職になったものの,仕事が十分できず,悩んでいる女性も当時はあったように見えた。それでも男性職場なので,女性にやさしくしていたようだった。仕事を考え,競合他社と市場で凌ぎを削っている中で,何を悠長なことを考えているのかと感じたのは私だけではなかった。

「形から入る」と云うのも一つのやり方で,中身が伴わなくても,形を作ってやっているといつしかできるようになるのも事実である。今日では,大企業では男女の逆差別は見られなくなってきているが,まだまだ中小の企業で女性が少ない職場では女性の進出は難しいところも多いのが実態である。それは,企業としての環境の厳しさの違いである。どっしり構えて育成する余裕などないからである。或いは,女性中心の職場もどんどん増えてきていることから,そうした職場では十分管理職として仕事をされているのだろう。だがこれも女性ばかりの単一性になる可能性が高く,多様性の面から見ると,必ずしも良いとは言えない一面があることも事実である。

多様性は時代の流れ。但し,良いことばかりではない

[Reported by H.Nishimura 2008.12.08]


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