■外部技術委託のコントロール 2 (No.093)

先週に引き続き,外部技術委託のコントロールについて考える。今回は,会社としての仕組み上での問題点などについて考えてみることにする。

  営業の仲介が機能しない

会社間を跨るやりとりに技術者同士が直接やりとりするのではなく,営業が間に入ってやりとりするケースもある。こうしたケースでは,営業マンが忙しく,他の案件も扱っているため,なかなか直接のやり取りと違ってはがゆい思いをさせられることがある。まして,営業マンがきっちりした人でなく,いい加減なところのある人物(営業マンには結構多いタイプ)だと納期など,なかなか思い通りにならない。営業マン特有の口上手だけで,営業マンが技術などをどこまでコントロールできる能力を持っているかどうかによっても,対応がかなり違ってくるケースがある。こうした営業マンに泣かされることは,しばしば起こっている。技術者同士が直接やりとりができる場合の2倍以上の日程が掛かると見た方がよい場合が結構ある。

外部の問題は,こうした人にまつわるコミュニケーションの問題が結構多い。余程,きっちりしたところでも,物理的に離れているだけでハンディが出てくる。契約で取り決めはやっているものの,生身の動きまでは契約できないことがある。約束不履行で訴えるには余程のことが無い限り難しいのが実情である。こうしたトラブルにならないように,予め,やりとり,特に技術的なやりとりに関して,取り決めをきっちりさせておくことが肝要である。特に,大きな商売に結びつかないやり取りは,営業マンにとっては重要な仕事でなく,後回しにされることが多いことを予め知った上で検討しておくことが必要である。

  契約内容が判らない(取り交わされていない)

何か技術的トラブルが発生したとき,その対応が契約内か追加案件として処理されるか,と云った契約に纏わる案件になることがある。細かい契約内容を吟味するのは,契約専門家に任せてもよいが,技術者のやりとりに関する範囲,納入されたものの不具合が見つかったときの処理,納入後の検収の期間,注文書と納期(性能・品質のレベル)など,基本的な内容については十分理解しておこう。

さらには,不履行時の罰則なども抑えておくことも必要である。まして,契約が取り交わされないまま,曖昧な形での仕事などは,後でトラブルのもとになるので,十分確認しておくことが大切である。通常,特に悪い関係で無い限り,お互いが誠意を持って対応することになっており,あまり契約を意識しすぎないことである。契約を意識しすぎて,肝心のプロジェクトが上手く進まないようなことがあっては何のための契約か判らなくなってしまう。

ただ,気をつけたいのはNDAなど,守秘義務がついた契約は,技術契約では通常一般にあることなので,その内容は十分理解し,厳守する必要がある。取り交わしをするドキュメントなどにも十分気をつけなければならない。同じように,知的財産権の扱いもトラブルにならないようにしておきたい。

  新しい委託先の問題

委託先も取引がある程度続くと,QCDの能力も判る。ところが新しい委託先では,QCDの実力がよく判らないことが多い。当然,委託先は仕事ができるだけ多いに越したことはないので,能力以上のことをできるように取り繕う。特に,経営者はそのように振舞う。しかし,現場の実態は,こちらの希望とはかなり乖離していることがある。一見,能力があるように見えても,やらせてみるととんでもない,と云ったことさえある。取引を決めるのは上の人で,現場を任された責任者は,委託先の能力が低いことを嘆く先がなく,出来が悪いと指導力がない,管理能力がないと見られかねない。

このように新しい委託先の場合は,予想外のことが起こるリスクがある。もちろん,期待以上の場合もないことではないが滅多にない。特に,技術力があってその技術を購入する場合には少ないが,技術力も無く,仕事を請負のような形で委託するところには,こうしたケースは山積する。仕事のやり方,管理の仕方を一から教えなければならないようなところさえあるのが実態である。初めての取引先は,じっくり育成するくらいの覚悟をもって当たるのが良いのかもしれない。そうすれば,こちらの期待とのギャップも少なく,徐々にこちらの云うことが判り,QCDのコントロールもしやすくなる。

外部委託のコントロールは仕組みをよく理解して始めることが大切である

 

[Reported by H.Nishimura 2008.11.17]


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