■課題の見つけ方 3 (No.091)
課題の見つけ方 続き
前述の二回で課題を抽出するタイミング,方法を述べたが,真の訴求力のある課題とするには,次のようなことが備わっている必要がある。その点を補足しておきたい。
分析力を養う
課題を抽出するタイミング,方法は判っても,それらの事象を本当の重要な課題とするには,ある程度の分析力が必要となってくる。つまり,差分や結果,或いは変化分を読み取ってもそれがどの程度重要なものか,影響度合いがどの程度あるのか,はたまた,全体の中でどのようなポジションにあり,将来,その事象が大きく膨らむのか否か,など分析をしないと判らないことがある。
或いは,自分だけが直感で感じたとしても,組織で仕事をしている以上,他人へ訴えるためにも分析することは必要不可欠である。分析する目的は,自分が言わんとすることを裏付けるためである。したがって,何を言わんとするか,その論点を明確にし,その内容に合致した分析をしないと意味がない。つまり,分析してから言わんとすることを見つけようとするのでは,偶然それが見つかったことと変わりがない。これでは,上手な課題抽出には程遠い結果となる。そうではなく,差分や結果,或いは変化分から,こんなことが言えるのではないか,と論点を明確にし仮説を立てることがポイントで,その仮説を検証するために分析を行なう。そうすると,単なるひらめきが,データで裏付けられた論理的な見解にレベルアップする。そうすると,他人への訴えが説得力を持ってできることになる。この一連の流れが上手くできる人は,課題抽出が上手く出来る人となる。
ここで,具体的な分析のやり方が,衆知を納得させるだけの分析力があるのと無いのでは,結果が大きく違ってくる。つまり,他人を説得し,納得してもらおうとすると,それ相当のロジックが必要になってくる。先ずはそのロジックをきっちりと立て,それを説明することになる。昨今は,グラフなどは容易に作れるようになっているので,その説明に最も適したグラフで示すことも必要になってくる。通常は,棒グラフ,折れ線グラフ,円グラフなどで十分である。込み入った内容になってくると,相関図,バブルチャートなど,X軸,Y軸の決め方にも工夫が要るが,こうしたグラフを有効活用して,分析力をつけ,相手が納得できる課題抽出ができるようにしたい。
表現力を養う
分析力同様に,表現力,文章力が伴っていないと課題抽出は上手く行かない。つまり,自分の主張したいこと,即ち論点が的確に相手に伝わらないと,課題抽出したことにならない。折角,良い分析をしていても表現力が乏しいために相手に十分理解してもらえなかったり,文章が回りくどく何を言わんとしているかがピンと伝わらないようでは,折角の分析が活かされないことになる。それほど,表現力は重要なのである。
ここで言う表現力とは,文学的な表現力ではない。簡潔明瞭な,言わんとする内容が的確に伝わることである。そのために最も重要なことは,ロジックが合っていることである。前で言っていることと,後で言っていることが矛盾していたり,折角見える化してグラフを使っているが,そのグラフと表現が合致していなかったり,と云った部分があると,内容全体が疑われる結果になる。また,長々とした文章を続けるよりも,箇条書きで書く方が読みやすいし,ストーリー的に全体から部分へと云った流れがあると,読み手が理解しやすい。
これもある程度慣れが必要である。如何に的確に論点を明確にして自分の言いたいことが言えるか?言いたいことが伝わるか?である。起承転結がきっちりしていることなど,文章表現について言い出すといろいろあるが,簡潔明瞭(主語,述語が明確で判りやすいこと)で,短めの文章の方が読み手に理解させやすいことを先ず念頭に置こう。長々引っ張っておいて最後にやっと結論があるよりも,先に結論を述べよう。理由は,その後で付け足せば十分で,結論が明確ならば理解できるはずである。
視座を高めよう
課題は現場にあると述べたが,それは担当者目線で現場をよく見ることである。それと同じように,見る目線を自分よりも,一段上か二段上から見ることも非常に大切なことで,新たな課題発見には大いに役立つ方法である。つまり,視座を高めて物事を見ることは,即ち,視野を広げて見ることになり,従来とは違った見方ができると同時に,全体が俯瞰でき全体像から物事を見ることになる。リーダや上司がすぐに自分とは違った課題をいとも簡単に見つけ出すのは,こうした視座の違いが大きい。また,重要な課題,本質的な課題ほど,全体像から見ないと判らないことが多い。
また,課題抽出すると云うことは,今後どのような手を打つかにあり,当然,上司には内容報告することになる。そうしたとき,視座を高めて眺めておくことは非常に有効であり,上司目線を把握する訓練にもつながる。当然,上司から指摘を受ける内容も少なくて済む。打つ手が全体像を把握できているので的確になる。すべてが良い方向に向かう。言葉で言うのは簡単なことであるが,なかなか視座を高めることは容易なことではない。そのためには,上司が注目していること,関心が強いものは何か,など普段から何気なく把握していると,自然とそうした全体像を意識し,重要なことに気づくことになる。
少しは課題抽出について理解できたでしょうか?是非,頭だけで理解するに留まらず,自分でやってみてください。
[Reported by H.Nishimura 2008.11.03]
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