■課題の見つけ方 1 (No.089)

プロジェクトには,常にリスクや課題がつきものである。それらが,プロジェクトのスケジュールを遅らせ,品質の悪化を招き,結果的に多くの工数を要する,つまり多額の費用発生となって,プロジェクトそのものが拙い結果となってしまう。それを避けるため,プロジェクトリーダはもちろんのこと,プロジェクトメンバーも,リスクや課題の早期発見,解決を目指す。ところが,こうしたリスクや課題を上手く見つけ出す人とそうでない人が居り,この差がプロジェクトの成功に影響を及ぼす。そこで,上手いやり方とはどんなものかについて考えてみる。

  計画が明確なこと

プロジェクトの進み具合は,計画に対して順調かどうかである。つまり,その基準となる計画が明確になっていることが先ず重要なのである。ところが,明確になっていると思っているのはリーダだけでメンバーの認識とズレていたり,計画は立てられているもののマイルストーンが決まっていなかったり,或いは,クリティカル・パスがはっきりしていない場合と云うのは往々にしてあるものなのである。すべての基準となる計画が明確でないことは,それだけでもプロジェクトとしては非常に重要視される問題点なのである。計画がしっかり出来ているとの前提で考えることにする。

  計画との差を洗い出す(差分)

次に,前述した計画に対して,計画はあくまでも予測であり,思いも入った施策でもある。従って,実際に行動してみると予測とは違ったことがいろいろ起こってくる。課題を見つけ出すには,これら計画との差分の大きいものに注目する。計画との差分が大きいことは,計画との狂いであり,その原因となるものが課題としてクローズアップされてくる。ここでは計画差の原因ではあるが,計画そのものが間違っていた,計画外の環境変化が起こった,実際にやってみると計画通りではなく,いろいろな問題が発生し遅延した,などと云ったものが挙げられる。

これらは計画差の原因ではあるが,一つの発生した事象でしかない。つまりこれらが課題に結びつく事象ではあるが,この事象を引き起こす要因を掘り下げないと,課題には到達しない。そこで,これらの事象一つ一つの引き起こした要因を探っていく。中には単純明快なものもあるが,なかなか真の要因に届かないようなものもある。ここでは,可能性があるものは,思いつくだけ挙げた方がよい。思い込みで限定してしまうと,間違った方向に行く可能性もあり,有効な要因に絞り込むのは,一旦挙げるだけ挙げてからの方がよい。

また,計画の差分なので,必ずしもマイナスばかりではない。プラスになった要因も探り当て,その要因が仕組みやプロセスとして組み込まれたものか,たまたま上手く行ったものか,それにより課題になる可能性がある。

プロジェクトの進捗管理など見える化としてグラフ化されるケースが多い。進捗の実績だけをグラフ化しているのをよく見かける。現状,どのレベルまで到達しているかを見るには十分なグラフであるが,プロジェクトとして進めている中では,やはり予測との比較が重要である。計画通りなのか,遅れているのか進んでいるのか,グラフの見える化一つでいろいろな情報が与えられることになる。こうした基本的なことができているとプロジェクトはスムーズに展開する。

  累積結果から判断する(積分)

プロジェクトにはいろいろな工程があり,その工程でのアウトプット(結果)により,良かったか悪かったかの判断ができる。特に悪かった場合,そうした結果を招いた原因があるはずである。これもすぐに出てくるのは起こった事象で,引き起こした要因はもう少し深いところに存在する。この引き起こした原因が,課題であり,これを解決する方法を検討することが必要となる。また,累積結果から判断しようとすると,単純な棒グラフでの比較では無理で,合わせ込んだ面グラフなど,工夫を凝らしたグラフを作成して,そこから見つけ出される課題もありうる。
ここでの課題抽出で難しいのは,プロジェクト中にどれだけ有効な課題を抽出し,フィードバックが掛けられるかである。終わった結果から課題を抽出するのも,次のプロジェクトには,或いは経験知として蓄えられることからは重要性を持つ。それを,プロジェクト中に未然防止的に課題を抽出対応することはなかなか難しいことである。

(続く)


課題をきっちり把握して抽出することは非常に重要なことである

課題がきっちり抽出できれば,解決は容易である

 

[Reported by H.Nishimura 2008.10.20]


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