■振り返り(反省)について 1 (No.086)

我々は仕事で失敗をしたり,プロジェクトで思い通りに進まなかったり,何かと拙いやり方をした経験は誰もが持っている。こうしたときには必ず反省をする。メンバーで進めてきたときなどは振り返りや反省会を開いて,何がどう拙かった,或いは,あのときこうしておけば良かったのに,と思い直すことがある。こうし振り返り(反省)について考えてみる。

  目的(What,Why)

振り返り(反省)の目的は,端的には同じ過ちを二度と繰り返さないためである。人は忘れやすい動物で,嫌なことは忘れようとする習性がある。だから,拙いことをやった後,或いは失敗した後に振り返り(反省)をしないままにしておくと,また同じような過ちを侵してしまいがちである。だから,反省することは非常に大切なことであると子供の頃から教えられてきている。

しかし,大人になると,ついつい忙しさを理由に放ったらかしにしてしまうことが多い。特に,自分で痛い目にあった経験をすると,その直後は二度としたくないと思うが,それも束の間,いつの間にか痛い経験を忘れてしまっている。自分自身でもそうだが,まして他人事となるともっとひどい。組織内のつい隣の人間が失敗した同じことをやってしまっていると云うことは多い。一度あることは二度ある。二度あることは三度ある。同じ過ちが繰り返される。

だから再発防止なるものが叫ばれるのである。組織として同じ失敗を二度と繰り返さない運動である。そのためには,その失敗の真の原因が判っていなければならない。失敗の事象だけ判っていてもそれだけでは役に立たない。それを引き起こした主たる要因をつきとめておき,そうした要因が起こらないようにすることが必要である。それには,失敗をした人間がまず振り返って,なぜそのようなことをしてしまったのか徹底的に調べる必要がある。これが振り返り(反省)である。

組織においては,振り返り(反省)だけでは意味がない。この振り返った内容が次に伝承されなければならない。同じ失敗を起こさない防止策として役立たねば意味がない。どんな立派な振り返り(反省)をしても,次に伝承されていなければ,全く無意味になってしまう。振り返り(反省)が自分のためだけなら,痛い目に遭った経験だけでも十分である。組織としては,如何にそれが次の世代に伝承されるか,そのプロセスがきっちり出来ているかどうかも大きな問題である。

  タイミング(When)

次に,振り返りの時期,タイミングである。何か失敗をしたときは,すぐ振り返り(反省)をするのが一番良い。なぜならば,一番記憶に残っているときであり,その失敗の原因も容易に気づくことができる。それを忙しいとか,時間のあるときにやろうなどと考えていると,いろいろな要件が次から次へと入ってくるため記憶がどんどん薄れていく。老若に関わらず,人間の脳の記憶は時間と共に薄れていく。だから,振り返りは時間を置かずにやるのが一番である。

個人の失敗もそうだが,組織の失敗も同様である。組織と云ってもやはり人間がやったことなので,やった人間が中心に振り返る(反省)ことになる。その場合も,即日か,翌日,時を置かずに振り返ることが一番良い。関係者が集まらないとか,内容を整理してからでないと説明が十分出来ないからとか,延ばす口上はいくらでもある。しかし,これも結局,時間が経てば経つほどショックも薄れ,記憶も薄れてインパクトがなくなってしまう。

確かに,内容を一旦整理しないと,関係者に十分説明がつかないこともある。しかし,それも言い訳に過ぎない。真に重要なできごとだと思うのなら,次に同じ失敗を繰り返さないためにきっちり振り返ろうとおもうのなら,即刻実施するのがよい。整理は記憶が鮮明な中ではきっちりできるし,関係者の関心も高い状態にある。それを,数日も置いてしまうと本人の記憶の薄れ以上に,関係者の関心が無くなってしまう。まあ,そう同じことが起こるまい,などと他人事なのでどうでもよい態度を取る人も出てくる。

やり方としては,整理不十分は承知で,関係者でいろいろな意見を先ず出し合って議論することがよい。整理は,みんなの意見がいろいろ出揃ってから,一旦整理をした上で再度集まって貰う方法でもよい。振り返りのタイミングを逸することの方が結果は悪くなる。

小さな出来事は以上のようなやり方で十分だが,一年も掛けたプロジェクトなどの振り返りは別である。それだけの時間を掛けたプロジェクトなどの振り返りは,やはりきっちりした振り返り(反省)ができるタイミングが必要で,一般的にはプロジェクトの整理がつく時期,即ち完了後1カ月以内と云ったところだろう。その期間は,プロジェクトに携わったメンバーもほっと一息をつける時期でもあり,素直に良かった点,悪かった点について冷静に振り返りができる。また,新製品開発などは,市場に出荷された結果のフィードバックが始まったり,或いは納入したものの初期の評価が出る頃で,顧客からのフィードバックが出てくる頃である。そのような出荷先からのフィードバックがあった方がよい。それには自分たちで考えていた以外の視点も含まれるからである。

また,次のプロジェクトのスタートのタイミングとの関係も重要で,続いてすぐ次のプロジェクトが始まるのであれば,少なくともその前に振り返り(反省)はやっておくべきである。目的でも示したように次のプロジェクトに振り返った点が活かされなければ意味が無い。少なくとも確実に次のプロジェクトに反映されるタイミングまでにはやっておくべきである。

  実施するメンバー(Who)

それでは振り返りを実施するメンバーはどんなメンバーが適切だろうか?一般的には,関連したメンバー全員で行なうのが良いが,人数の関係や意識レベルの違いから判断して,適当と思われるメンバーでやることになる。担当者を含めて全員からアンケート形式で意見を集めるといった方法も一つの方法である。しかし,これも単に集計するだけではなく,内容把握ができるメンバーで内容の吟味はした方がよい。次へ活かすためにどうあるべきか,このことに関心が強いメンバーでの振り返り(反省)が最も充実したものになる。

また,実際に携わったメンバー以外にも,プロジェクトの内容を十分理解できている経験豊富な人に加わって貰って,違った角度からの視点で見て貰い,新たな気づきを与えて貰うことも振り返り(反省)の目的からは有効な方法である。そうすることによって,狭い範囲の振り返りで,仲間内の言い訳けを言い合うようなことを回避でき,他のプロジェクトも役立つ内容が盛り込まれることがある。

(続く)

振り返り(反省)は重要なことである。是非,実のあるものにしよう

 

[Reported by H.Nishimura 2008.09.29]


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