■目標と評価尺度 (No.083)

前回に引き続き,「目標」に関してもう少し掘り下げて考えてみる。

  目標の決め方

そもそも目標とは,漠然とした「あるべき姿」を想定して,その状態になるには,どのようなことが達成されていなければならないかを考え,抽象的な内容を具体的な内容に変換しなければならない。一番良いのは,それを数値化するなどして「目標値」を定めることである。「目標」は単にいつまでも目標ではなく,その目標が達成できたかどうかを判断することが必要である。
だから,抽象的な目標のまま放置しておいては,結果に対する評価が難しい。主観で判断が変わる可能性がある。数値化する意味は,こうしたことが起こらないように明確にするためである。数値化してあると誰が判断しても明らかである。また,この「あるべき姿」が理想に近く高ければ高いほど,目標が高くなり,容易には到達できない目標になる。そうしたことを十分加味した上で,目標を定めなければならない。

  なかなか目標が決められない人に

若い人には,なかなか自分で目標を決めることができない,と云う人もいる。確かに,漠然とした思いはあっても,「あるべき姿」と云ったものもない。それなのにどうして決めろと云うのか?と云った嘆きもあろう。そうした人は,上司に目標を与えて貰えばそれでよい。最初はそれで十分である。与えられた目標を如何にして達成して見せるかに注力すれば十分である。
しかし,いつまで経っても,目標は上から与えられるもの,と云うのでは困る。やはり,自分自身で「目標」を持つことが重要であり,そうすることが成長に結びつく。最初は,ごく低い目標から始めれば十分である。自分で目標を創ることが重要であると理解して始めよう。

  定義の重要性

目標についても,最初の段階できっちり定義をしておくことが大切である。と云うのは,予測と実績で比較するとき,予測時点での定義と実績の定義が違っていては,管理にならない。このことは,前回にも述べた。
さらには,目標値は関係するものと比較をされることが多い。こうしたとき,比較して良かった悪かったと数値だけが独り歩きすることがよくある。上司からも他との比較で改善が必要だ,などと云われることがある。ところが,きっちり定義され,どこから見ても同じ目標値であればいいが,往々にして定義が違っていたり,曖昧なため扱っている数値の範囲が違っていたり,比較の意味を為さないことがよくある。「目標値」と数値で示されると正しいものと勘違いしやすい。目標を決める段階で,定義が曖昧にならないよう,比較対象の意味があるようにデータが把握できることを確認しておこう。

  目標を達成するには

次に,如何にして目標を達成するかについて考えてみる。
通常一般的に,目標を達成しようと考えスタートするが,途中で挫折することが時々起こる。それは,目標が高ければ高いほどそのリスクは増す。しかし,時として高い目標にチャレンジしなければならないことに遭遇することは稀なことではない。即ち,我々が仕事をする中で,高いと感じる目標設定がされる場合があるということである。或いは,自分で果敢に挑戦するために高い目標を敢えて設定することもある。こうしたとき,高い目標におじけることなく果敢にチャレンジしなければならない。その一番確実な方法が,高い目標をいくつかの中間目標に分割することである。即ち,マイルストーン(中間目標)を定めることで,先ず一つ目の山(目標)をクリアすることを考える。これは,最終目標の高い山から見れば,随分低く確実にクリアできそうな山に変化する。このマイルストーンをいくつか設定することで,一つずつクリアすることを繰り返し,最終目標の高い山に到達しようとするものである。目標を確実に達成しようと目指している人は必ずマイルストーンを定めて,それを着実に克服して行こうとしている。

  評価尺度とは

目標ができても,それを単に結果評価するだけでは,結果オーライの判断で,プロセスとしてどうだったかの振り返りができず,次へ役立てることができない。つまり,優秀な目標の決め方は目標と同時にそれを何で評価するか,幾つかの評価尺度を設定しておく。そうすると,それぞれ違った観点の尺度にて評価して,結果どうだったかがはっきりされることになる。
目標は決めたがその評価尺度は決めていない,と云ったケースは結構ある。結果だけを見て判断すればそれで十分だと云う意見もあるが,仕事における目標には,必ず評価尺度を明確にしておいた方が,結果判定でも大いに役立つ。特に,数値化できていない目標などを設定した場合には,必ず評価尺度が必要である。なぜならば,主観的な感覚で結果判断をされてしまいがちである。これらは客観性を欠いていて,汎用的には通用しない。もちろん,トップダウンで降りてきた目標では,トップの主観的な判断がすべて,と云ったケースも無いわけではない。しかし,そうしたケースは稀で,やはり客観的な評価尺度を持つべきである。


目標を決めるには,同時に評価尺度も決めておこう

目標を確実に達成するには,マイルストーン(中間目標)が絶対に必要である

 

[Reported by H.Nishimura 2008.09.08]


Copyright (C)2008  Hitoshi Nishimura