■「日本経営品質賞」とは 2 (No.074)
「日本経営品質賞」の全体像を一般の組織活動と比較して示したので,今回は「日本経営品質賞」のキーポイントを判りやすく簡単に説明する。40〜50時間掛けて受講する内容を,簡潔に示すのは容易ではないが,試みてみることにする。機会があれば,別途コーナーを設けて詳細を述べることにすることも考えてみたい。
組織プロフィール
この「組織プロフィール」は前回の説明にもあるように,組織としての事業戦略に相当し,「何を目指すのか」を考え,経営を取り巻く,外部・内部環境の現状と将来に対する認識を深め,課題を抽出し,組織としてどのように変わるべきかを明らかにすることを目的としている。つまり,これの正解は無いが,メンバーで考え抜き,意識を共有することから始めることになっている。
「組織プロフィール」としての主な記述内容は,以下の6つである。
1.組織が目指す「理想的な姿」
2.顧客認識
3.競争認識
4.経営資源認識
5.変革認識
6.組織情報経営が上手く回っていない組織,或いは未熟な組織では,この「組織プロフィール」がなかなか書けない。ある意味では,この「組織プロフィール」がきっちり書け,メンバーに共有されているようであれば,組織としてはしっかりできていると云ってもよい。事業戦略など,企画が書いたものがあるとか,中期計画としてはある,と云ったレベルの組織は見受けられるが,それらが事業計画,さらには各組織レベル,個人レベルにまで落とし込まれているかどうかである。
重要成功要因
組織プロフィールから,「目指す理想の姿」と現状のギャップが抽出され,目指す姿に必達するための要因をここでは,「重要成功要因」と云う。これは過去の成功した要因ではなく,将来に向けた成功要因である。
この「重要成功要因」とは,仮説であり,これが組織的に上手く活動展開されているかどうかが,アセスメントのポイントとなる。したがって,この「重要成功要因」を導き出す作業も,本活動では重要なプロセスである。誰かが見つけ出し,それをみんなでやりきる,と云った簡単なものではない。絶対に成功させると云った気持ちで,メンバーの中に,十分腹落ちしている内容でなければならない。通常一般には,戦略=「重要成功要因」であることが多い。
日本経営品質賞の審査では審査員が「組織プロフィール」から見出した「重要成功要因」を導きだし,それを基に審査されるようであるが,審査を受けることが目的でない社内のセルフアセスメントでは,「重要成功要因」=戦略になっているはずであるから,戦略についてアセスメントすることになる。
ただし,この機会に改めて戦略を見直すことも含めて活動する場合は,「重要成功要因」をメンバー全員で導き出す作業をすることは,意義あることである。この場合,今ある戦略を否定する可能性もあり,社内事情を加味した扱いが必要で,実質的である活動にすべきである。(戦略とは別に,経営品質の活動をするのは好ましくない)
8つのカテゴリー
次の図に示すのが,8つのカテゴリーの関係図である。
組織活動を,「重要成功要因」(=戦略)の仮説に対して,次の8つの切り口で検討することになる。
カテゴリー 内容 経営幹部のリーダシップ 事業全体のキーを握るところであり,その重要性はあえて説明するまでもない。 経営における社会的責任 これは日本特有に定められたもので,MB賞にはなく,上記リーダシップの中に入っている 顧客・市場の理解と対応 顧客本位の考え方で組織活動が展開されているか 戦略の策定と展開 戦略・戦術の善し悪しではなく,策定プロセスが,組織全体で対話,学習を繰り返しながら形成されているか 個人と組織の能力向上 卓越した成果を上げるには,組織的能力の創造に対する仕組みや運営の改善が必須である。社員の満足度も大いに関連する 顧客価値創造のプロセス 高い顧客価値を実現する製品・サービスの創造がどのような一連のプロセスで行われているか。また,支援のプロセス,協力関係にあるパートナーとの関連のプロセスがどのようになっているか 情報マネジメント 経営情報に焦点を当て,選択,収集,分析がどのように行われているか 活動結果 「方法/展開」のカテゴリーで示された評価尺度・指標に対する結果,及び顧客満足,社員満足の結果,財務の結果に焦点を当てる 最後の活動結果にあるように,プロセスが回っているかどうかから,さらに踏み込みその結果が経営成果として反映しているか否かまで踏み込むことになっている。(経営成果が出ていない場合は,自ずと低いアセスメント結果になる)
セルフアセスメント
次に,全体の活動をどのように回すかを示したのが次の図である。つまり,PDCAのサイクルを,次のステップで回す。
P : 「組織プロフィール」
D : 実際の活動 (「カテゴリーレポート」は審査のための説明である)
C : セルフアセスメント
A : 改善・改革計画(次の計画に反映)
「セルフアセスメント」の重要性は,自律して改善・改革ができる組織を目指しており,セルフアセスメントをやることで,メンバー間での「気づき」が生まれることである。この「気づき」が,メンバー自身の腹落ちしたものになることが,改善・改革の大きなエネルギーになる。人は他人から言われたことより,自らやろうとしたことの方がやりがいも大きい。そうしたことが,組織としてPDCAで回ることが,大きな改革につながる。少なくとも,3年はこのサイクルを続けなければ真の成果は出てこないとも云われている。
以上,簡潔明瞭にポイントを絞ったつもりであるが,さらに詳細をもっと詳しく知りたい人は,経営品質協議会のホームページから,或いは一般書店でも関係書籍は販売されているのでそれを見ていただきたい。
[Reported by H.Nishimura 2008.07.07]
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