■日本経営品質賞 セルフアセッサー資格更新 (No.072)

先日,標記「日本経営品質賞」のセルフアセッサーの資格更新研修があったので受講してきた。これは,私が仕事に関する正式な資格として持っている唯一のものであり,2年に1度,認定更新研修を受けなければならないことになっている。

  「日本経営品質賞」とは

この「日本経営品質賞」JQA(Japan Quality Award)活動は1996年から日本で始められているが,この基はアメリカ国家品質賞となっている「マルコム・ボルドリッジ賞」にある。これは1980年代レーガン時代に,特に日本などに痛めつけられた産業回復を目指した研究成果で,経営革新の要素をマネジメントモデルとしてシステム化されたものである。特に,欧米は日本とは違って,膨大なビジネスモデルを丹念にデータ分析し,システム化することに長けており,産業回復を目指した国家的な活動で,1988年に制定されている。1990年代の米国産業が復活したのは,この活動によるところが大で,その成果を各国が認めることになり,世界のデファクト・スタンダードになり,60カ国以上に広がっている。

日本はそれから遅れること数年,1993年に顧客満足経営のあり方について,先進的に取り組む大手企業幹部で研究会が発足,MB賞を1年掛けて研究,これが発展,産業界に広く呼びかけ運動が始まり,約100社の幹部が2年間にわたって顧客価値の経営を実践する評価基準などを研究,1996年から「日本経営品質賞」が創設されている。

この内容の詳細については,次回以降に触れることにする。

  資格の更新認定コース

これは,セルフアセッサーの資格を取得している人を対象に,全国各地で開催されている。1日の研修である。東京では毎月,大阪では1回/2カ月,地方都市では1回もしくは2回開催される程度で,経営品質協議会から講師が来られ,1回50名程度を対象に行われており,今回大阪開催のコースに参加した。6人一組のグループに分けられ,私たちの6人のグループも,静岡,三重,鳥取,神戸,大阪2人と各地の企業,公務員の方々であった。

先ずは,講師の方から,「経営革新とセルフアセスメント」と題し,セルフアセッサーの声として,アセスメントする上での問題点を挙げ,それらについて解説があった。よくある意見として次のようなものが挙げられていた。

  1. アセスメントが実施できるまでの準備に時間が掛かる
  2. 報告書の作成に時間を要する
  3. アセスメントの準備が煩雑
  4. アセッサーによって評価がばらつく
  5. フィードバックが実態を反映していない
  6. 面倒くさい割に効果が期待できない

しかし,実際に資格更新に集まった多くの人の悩みは,折角苦労して資格を取得したが,それを発揮する場がなかなか与えられない。つまり,持っている資格と実際の仕事とのギャップである。つまり,使わなければだんだん遠退いていき,単に資格を持っているだけになりかねないことを問題視されていることが多い。

これはセルフアセッサーの資格そのものが十分認知されていなこととともに,会社の中でこの資格を持つ意味が,「革新を率先遂行できる力量があること」を意味していないことにも依るのではないかと考える。つまり,セルフアセッサーの資格を持った人は,本当に資格を有することで企業革新をできるのか,と云う点である。

私が見る限り,資格と企業革新能力とは全く違ったものではないか,と思っている。つまり,確かに日本経営品質賞は,企業経営のあり方をいろいろな角度から評価し,課題を抽出するやり方を示しているが,それはアセッサーとして,即ち評価者としてのハウツーを教えている。それは経営状態を,日本経営品質賞で決められたフレームワークの中で,評価し採点するやり方であり,そのコツである。そのことと,企業革新を率先する革新リーダとは一致しない。もちろんやり方も,切り口などは同じでも,革新者としての行動は違う。

私が資格取得したときから,日本経営品質協議会にはアンケートの度に書いていることだが,セルフアセッサーの資格は,あくまでも評価者としての資格を求めており,それらに沿って行われている。しかし,企業で求められているのは,評価者も必要だが,それらを学び革新を進める人で,いわば評論家はそれほど必要としていない。この点が,セルフアセッサーとして,やっている内容は評価者研修であるのに,理想的な姿は革新リーダなのである。それならば,革新リーダ研修をやった方がよほど効果的なのである。

その声が届いたのか,昨今は新たにアセッサー資格取得の方法も変更され,革新リーダのやり方を学ぶことも始められているようである。内容は殆ど判っていないので,詳細なコメントは控える。

  企業の求めるセルフアセッサー像

経営品質を云々するためには,少なくとも経営に関する知識がなければならない。むしろ経営者と対等で議論できるくらいにならなければならない。もちろん,情報の量が違うので無理からぬ部分はあるが,企画室など経営者を支えるスタッフがこのセルフアセッサー資格を取れば有効に機能する。よく知らないが,元々はそうした人が中心だったが,アセッサーが増え,薄まってしまったのが今日の状況だとも聞く。そうであれば,むしろ原点に返るべきで,革新リーダとしての資格にすべきである。

確かに企業で働く中で,自分の限られた枠内でセルフアセッサーが活かされるかと云うと,そのチャンスは少ない人が多いかも知れない。しかし,それで甘んじている人は,もともと革新家でも何でもない資格を取っただけの人に過ぎないのではないか。真の革新家は自分から革新すべき部分を見出し,それを幹部にアピールして,経営に貢献しようとするべきである。

日本経営品質賞のフレームワーク,やり方はツールでしかない。それを如何に有効に企業内で活かそうとするか,それがセルフアセッサーに課せられた仕事だと思っている。

このエッセイを書いている間に2008年度の更新の認定が届いた

 

更新の度に,この資格をどれだけ活かそうと思っている人がいるのだろうか,と考えさせられる

経営品質協議会のやり方にも疑問を感じてならない

 

[Reported by H.Nishimura 2008.06.23]


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