■仕事の役割 (No.060)
リーダの役割の重要なものの一つに,自分の組織のミッション(役割)を明確にすることがある。誰が見ても,明らかな役割を持っている組織は多いが,最近は,横文字の入った組織や,名前と必ずしも一致しない仕事を受け持っている部署もある。しかし,仕事をする上で,組織のミッションがはっきりしていないことは重大な欠陥である。このことについて考えてみる。
ミッションとは
ミッションと云うと何か横文字で,仰々しいイメージを抱くが,組織人なら誰でも判ることである「組織の役割」,即ち,その組織がどんな役割を果たすことになっているか,と云うことである。そんなこと判りきったことで,何を今更と云う人も多いかもしれないが,実際には曖昧なものであることがよくある。つまり,一般的な,技術,営業,製造,購買,品質管理などは,誰が見ても仕事の分担は明確である。しかし,実際の組織はそんな簡単なものではなく,その下に色々な組織がぶら下がっている。技術などは,技術1課,技術2課などと,それだけでは役割は判らないが,それぞれの役割は明確に決まっている。(むしろ,外からは役割がわざと判らないようにしている場合が多い)
ところが,組織名はそんなものばかりではなく,○○企画,○○推進室,特に横文字の略号で示された組織などは,名前を付けた組織長の思いとは裏腹に,部下である担当者まで行き着くまでに,役割が曖昧になったり,歪められてしまうことがある。極端な例は,立派な組織名があるにも拘わらず,その部下のスキルが到底及ばず,役割を果たすことができず,現状のメンバーでできること,安易なことしかやっていない部署もある。
ミッション(役割)とは,先ずはリーダがはっきりと組織の役割として部下に示すべきものであり,一方,ミッションとはお題目を唱えるだけのものではなく,部下がそれを果たすスキルをもっていなければならないものである。そうしたあるべきミッションと違って,曖昧な,極めて中途半端なもので済ませているリーダも多い。特に,昨今若手登用で,リーダとして未熟な場合,きっちりと部下にミッションとして示せていないケースもある。
なぜ,ミッションをこれほど云うのは,仕事の基本中の基本であり,会社として,それぞれの組織が違ったミッションで仕事を分担し,それらが積み重なって会社の体を為しているのである。それらが,ぐらついているようでは,骨格がしっかりしていない状態と同じで,それに伴うスキルやモチベーション(骨格に対しては筋肉や神経などに相当)が役に立たなかったり,それらを向上させる目標が決まらないようなことが起こるからである。大きな会社全体のビジョンがあり,それを実現するためにそれぞれの組織としてのミッションが定められるべきである。個人は組織のミッションを果たすべく仕事をすることになる。
何となく判っているはず,阿吽の呼吸で仕事を
新人が入ってきたり,他から異動してきたりした場合,その人達にきっちりとミッションと云う形で組織の役割を示すことが出来ていないリーダが結構居る。それは当然自分たちの組織に入ってきたのだから,自然に判るはずだとか,最初にミッションを言っても判らないだろうから,先ず仕事を覚えて貰うことから始める。つまり,何をするかではなく,どのようにするかを先ず教える。
そのこと事態は決して間違いでもなく,効率的である場合が多い。しかし,往々にしてそのまま仕事を覚えたのだから,ミッションも判ったはずだと決めつけてしっかりミッションを伝えないことがある。そうすると,新しく入った人は,周りを見ながら,雰囲気でその組織の役割を感じ取ることになる。ここに大きな落とし穴がある。やっている雰囲気そのものがミッションとは違う場合がある。つまり,ミッションに忠実にやっている人もいるが,多くの人は自分の得意なことを,或いはやりやすい仕事をやる人が多い。そんな人を周りで見ていると,それが,あたかも組織のミッションだと勘違いしてしまう。
こうした組織はざらにある。特に,リーダが曖昧な判断しかできず,部下に任せっきりの組織では,本来のミッションから外れた仕事を一生懸命やっていることがある。しかも,当の本人達は,ミッションと違うことが判っていない。それが続くと,間違ったミッションが根付いてしまう。そうなると,組織の末端で破綻がおこることになり,会社全体でそうした組織がいくつもあると,会社のビジョン達成はおろか,年間目標などの到達も危うくなってくる。
こうした事態を避けるには,きっちり組織の長がミッションを明確に打ち出し,それを部下のメンバー全員がきっちり認識して仕事ができているかどうかを確かめることである。ISO9001などでは,マネジメントレビューといって,会社社長もしくは幹部による仕事の役割が果たせているかレビューすることになっている。こうした機会をきっちりするかしないかが,組織の強さにもつながってくる。
研究部門のミッション
技術系の部門のミッションは比較的明確な場合が多く,ミッションがどうのこうのと云った議論が展開されるケースは少ない。現場の技術部門は,製品の出荷までの諸々の技術課題を解決させて出荷に結びつけることである。研究部門は,会社規模や扱っている製品によって様々であるので,その組織が研究開発の対象として,どの程度長期の製品開発をするのか,自主開発なのか,現場からの委託として開発するのか,などその役割が決められている。
また,全てが製品を扱うのではなく,部分的にどの部分の開発をするのか,或いはソフトウェアの開発を担当するなど,その担当する分野でミッションが決められるケースも多い。どんな性能の製品を,いつまでに,どのくらいのコストを掛けてと云った,QCDを明確にしてプロジェクトとして進める場合が多く,こうしたもののミッションは極めて明解である。
製品に繋がるライン上にある組織のミッションはこのように明解であるが,技術でも管理部門などになると曖昧になることが起こってくる。マネジメントを管理するなど言葉の響きは納得できる内容だが,実態は何もしなくても,対象の相手の動静が全てを決めることになる場合がある。管理といっても,対象相手がしっかりしていれば,無管理でも上手く管理できたようになるし,逆にしっかり管理しているつもりでも,相手がそれだけの能力を持っていないと管理だけではどうしようもなく上手く進まないことが起こる。そうしたことを十分踏まえた上で,管理部門などのミッションは明確にしておかないと会社としてはどうでもよい組織になってしまう恐れがある。
ミッションについては,技術経営とは? 4 (MOT人材とその育て方)でも,詳細に説明しているので参考にしてください。
あなたは組織長から自分の組織のミッションを明確に伝えられていますか?
常にミッションに沿った仕事をしているか,自己チェックしていますか?
[Reported by H.Nishimura 2008.03.31]
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