■組織の成熟度合い 1 (No.047)
組織に関して数回述べたので,最後として,組織の成熟度合いに関して述べてみる。組織の中に居ると,ああした方が良いのに,こうした方がもっと良いのに,と思うことがしばしばある。まだまだ組織として未熟さを痛切に感じるときである。組織として,問題点に対する取り組み方の違いで,その組織の成熟レベルがどの程度かが判断できることを示してみる。
◆成熟度が低いレベル : 問題発生したときに対処する
先ずは,組織が十分出来ていない状態,組織的には未熟なレベルで,仕事の改善や問題点に対する取り組みなど,全ての面で後追いであり,場当たり的,対応方法にバラツキがあるなどで,組織としての形態は取っているが,まだまだ個人プレイが横行している状態にある。組織の責任者もワンマンな場合がよく見かけられる。それらのポイントは以下に述べるようなものがある。
●当事者意識がどれだけあるか
改善活動や問題が発生したとき,関係者が集まっていろいろな面から検討することがある。一応組織としてそれぞれの役割があるので,それらに則って対処する方法を検討するが,仕事だから,上から言われたからやらなければならない,或いは仕方ないと割り切って対応をしているケースである。これは,普通一般の仕事のやり方で特別悪いわけではない。給料を貰って仕事をしているのだから,指示命令に従って行動するのは当然である。最近の若い人には,こういった仕事をドライに割り切ってやっている人が結構居る。
しかし,自分だけで仕事をしているのであればそれでも結構だが,会社組織で仕事をするのは必ずしもそれだけでは十分でないのである。上司が仕事を言い付けなければ何も仕事をしない,と言うことがあって良いのだろうか?組織人として,少しでも関連することであれば,何とか解決しなければならないと役割分担をある程度乗り越えても解決方法を検討しようとするのでは,その結果も違ってくる。
昨今,いろいろな会社の不祥事が報じられているが,内容的には法律的や倫理的問題があり,許されることではないが,起こった時の問題の対処方法など,組織のゴタゴタが表面化している部分を見るに付け,組織体として十分機能できていないと感じることが間々ある。確かに,小さな会社では社長は神様のような存在で何も反論できないと言うのは,サラリーマンとしてよく判る。しかし,社長一人の指揮命令で一から十まですべてやっているのではなく,それぞれの役割において,当事者意識の欠落が無かったとは言えない感じを受ける。
一旦問題が起きると,その対応は,どちらかといえば後ろ向きの仕事であり,顧客からはクレームを言われるものの褒められることは先ず無い。辛い立場で対応しなければならない。こういったとき,仕事と割り切るのではなく,会社側として当事者意識をもって当たるのでは,顧客からの印象も全く違ってくる。成熟度が十分でない組織では,こうした当事者意識が希薄で,きっちりとした対応ができないことが多い。
●対応が均一性ある形でできているか組織としての対応が,その部門によって変わることがある。もちろん役割責任が違うので,同一ではないが,未熟な組織では,ルールに則るまえに,組織責任者の属人的な内容が全面的に出てしまう。いわゆる,その責任者がこの場合はこうすべきだと云い,違う場合にはこんなやり方をすべきだと,そのとき,その場面によって言い方が変わる。その下で働く部下にとっては,どのようにすべきかと云う基本的なルールを示されないから,やり方が判らない。
だから自分でこうだと思ってやってみると,そこはこのように違うから改めろと云われる。とにかく,見本らしきものはあっても,状況が違うのでアレンジしなければならない。アレンジしたつもりでやって見ると,指摘される。確かに,いちいち綿密な指導は良いが,これでは組織としての成り立ちになっていない。責任者の気分によっても左右される結果になる。このような組織では,成果物として出来上がるもの,それが製品の場合もあり,サービスの場合もある,或いはドキュメントの場合もある。それらを,いくつか並べてみるとある程度の出来映えはあるが,多分,均一性には欠けているであろう。
また,そうした成果物は,その場限りのもので,組織としての技術やノウハウと云った資産にはならないことが多い。決して,いい加減に仕事をしているわけではなく,誰もが一生懸命仕事をしているのである。そして,こうしたことは多かれ少なかれ,どこの会社でも場面によって行われていることである。だが,組織体として成熟しているかと,問いかけると必ずしもそうだとは云えない結果になる。
また,何か問題が起こったときに,自分には関係ないと気にしないのと,顧客に対して迷惑を掛けたのだから何か手伝うことがないか,と考えるのでは大きな違いがある。優れた会社,組織では,こうした問題が発生したときに,自然な形で関係者が集まり,みんなで知恵を出し合って解決方法を検討する,と云った風土が出来上がっている。詳細な内容は知らないが,書籍で見る限りでは,トヨタなどは,こうした改善が積み重ねられていると云われている。そうしたことができる組織では,役割分担も極めて明確に定められており,その対応方法が人によって変わることなく,均一な対応方法がとられ,会社として一体感のある対応で,顧客に安心感を与えることができる。しかし,未熟な組織では,対応がその場によって変わる。
●トップへの報告ができていない新聞記事で賑わしている問題発生時に,社長や幹部が頭を下げている姿をよく見かける。しかし,往々にしてトップが内容を十分把握できていなかったケースがある。つまり,なかなか悪い情報は上には伝わらないことが多いのである。内部論理が働き,自分の責任にしたくない人が多いので,どこかの段階で悪い情報は止まってしまって,なかなかトップまでは行かないのである。
昨今は,メール一つでトップへ情報が伝達される時代である。情報過多であり,情報が届いていないことはないとも思える。実態を調べた訳ではないので,問題の会社がどうだったかと云うつもりはない。しかし,メールの情報も,日に百通以上も来るような組織では,正しい情報伝達ができているとは云えないと感じている。確かに,トップが現場の内容を把握していることは重要なことである。しかし,一般的に現場の良い情報は届くが,悪い情報は上には届かないのは,今に始まったことではない。
組織が成熟してくると,そうした悪い情報を,素速くトップへ通告できるルール,仕組みが作られる。つまり,通常人の一般的なやり方では届きにくいもの,クレーム情報や工程での重要問題など,特に,顧客に影響を及ぼすものは,一斉発信など,トップも上司も同時に同じ情報が届くような仕組みを考えられているところもある。これは,途中の悪いフィルタで遮られることを防いでいる。
こうした仕組みが出来上がると,例えば重要なクレームなどでは,トップへすぐさま情報が届くので,トップ自らが先頭に立つことによって,指揮命令が徹底され,問題が速やかに解決されることになる。昨今は,対応方法を誤ると,会社の命取りに発展しかねないこともあり,リスク管理として採り入れられるようになってきている。これは,大きな組織になればなるほど,素早い動きが重要になってくる。
以上,組織としては最低限のレベルである問題が起こったときの代表的な対応のポイントを述べたが,その対応内容によって,組織そのものの実態が暴かれることになる。
(続く)
貴方の組織は,問題点対応は十分ですか?
組織として十分機能していると感じていますか?
[Reported by H.Nishimura 2007.12.17]
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