■会社とは? 3 (No.035)

アウトソーシングではなく,コンサルタントが入って,業務改革などを指導するケースも増えてきている。

  コンサルタントが会社に入ってきて指導

コンサルタントのケースはアウトソーシングとは云わないが,業務改革など大きな改革をやろうとしたとき,自分たちではなかなかできないことがある。つまり,これまでやってきたことを自己否定することなので,なかなかできないのである。最も一般的にやられているのは,コンサルタントを入れて,改革を加速するやり方である。確かに,一流のコンサルタントは,各社の事例も多くデータベースとして持っているので,そうした事例をもとに,対象の会社に合うようにアレンジして提供してくれる。今まで,自己流のやり方をしていたものにとっては,新鮮ですばらしいものに映る。事実,コンサルタントは改革のシナリオを作り,そのパイロットモデルに沿って改革の一部で効果を見せてくれる。

コンサルタントには,会社として巨額の投資をすることになる。当然,その見返りは,これまで他社でやってきた事例などをもとにして,自社では気づかなかった点を浮き彫りにしたり,これでよしとしていたことも更に素晴らしいやり方を示してくれたりする。流石,と感じることが間々ある。コンサルタントを信じてよい点を積極的に取り込み,さらには盲信してしまって何でもすべてその通りにやってしまうケースが多い。それで,あたかも自分たちでできるようになったと信じ込んでしまう。

ところが,これが後で大きな問題になったり,或いは改革が元に戻ってしまうことが起こるのである。このことは,「知識と実行力」(No.029)でも述べていることの繰り返しになるが,重要なポイントである。つまり,こうした改革は,会社の風土・文化から変えることになる。このことは根深いところからの変革で,一見変わったかに見えても,それが風土・文化として根付くまでには時間が掛かる。また,コンサルタントが居る間は,確実にコンサルタントが効果を出してくれる。時には,風土・文化に相当する部分までコンサルタントにやってもらう例もある。これでは会社としての魂の部分にまでコンサルタントを入れてしまっていることになり兼ねない。

コンサルタントにやってもらうのはどの部分までか?これを明確にしておかないと,改革できたのは仮の姿で,自分たちでは何もできていない,自律できたとは云い難い形骸化したサンプルだけが残ると云う,無残な結果だけが残ってしまう。(笑い事では済まされない)

こんな場合にも,会社や組織,そして社風としてある風土・文化,これらは誰が守らなければならないのかと考えさせられる。

  外部社員が居ないと成り立たない組織

アウトソーシングで述べたように,外部委託社員を活用するメリットはいろいろある。まずは,安いコストである。社員一人を雇うには,給料だけでなく,諸々の経費が掛かる。それに比べれば,必要なとき必要なだけ,殆ど時間給での費用で済む。固定費ではなく,比例費的な扱いができる。また,必要とする専門職を持った人を雇うことが出来る。スキルを既に持った人だから,即効性がある。社員となるとその人の育成など面倒を見ることになるが,会社としてそうしたことが一切不要である。グローバルに競争する中で,海外の頭脳との競争から,アウトソーシングすることは止むを得ない面もある。

ただ,メリットばかりではない。一番重要な,会社は人,社員が経営している。つまり,社員が会社の風土・文化を伝統的に守り,創り出している。それは,必ずしも会社の幹部だけではない。一般の社員に到るまでいろいろな形で会社に貢献し,風土・文化の担い手になっている。ところが,外部委託の人になると,それは期待できないし,無理である。風土・文化を創る担い手が,一部欠けることになる。

このことは,今日の経営だけを見れば大した影響はない。むしろ,効率的で,利益も上がるだろう。しかし,新製品などを出し,販売を伸ばし利益を上げると云った“価値を獲得”する部分では効果的だが,技術力の蓄積,さらには伝統的な風土・文化に支えられた“価値を創造”する部分では大きなマイナスであることを忘れてはならない。ともすると,技術蓄積なども外部社員にさせて,形式知化することで,組織に蓄えられたようにしているところもある。

しかし,それは一見そう見えるだけで,最初の知識は人が創り出すものである。暗黙知ができ,それを形式知に変えているだけである。野中郁次郎氏が書かれた「知識創造企業」にもあるように,知識は暗黙知と形式知とを繰り返し,スパイラルに上がることで,組織知となる。したがって,背景,考え方,思想が継承されないものは,本当の意味での組織知にはならないと思う。つまり,外部社員が蓄積した形式知は,社員が形成した形式知とは根本的に違う。これに気づかないと,会社として数年後,いや十数年後に取り返しのつかない事態になっているのではないだろうか。

また,コンサルタントのところで述べたように,風土・文化の部分まで,外部委託社員やコンサルタントが入り込んでしまった状態,例えば,会社の基本となる規程・基準,要領,マニュアルなど行動の基本となる取り決めまでを外部委託社員がやってしまうことになっているケースもある。もちろん,承認など最終決定は社員である経営幹部が決めるのであるが,その土台までもを外部委託社員,或いはコンサルタントが手をつけるのは,大いなる疑問である。止むを得ずやっているのか,気にもせず当然のことと思ってやられているのか心底は判らない。

しかし,こんな状態は,私などには異様に見える。社風のもとになるもの,風土・文化を創り出すものを自分たちで作らず,他社の事例の良いものを安易に取り込むなんてことは,とんでもないことである。そもそもそうした部分で自分たちにピッタリあったオリジナルな,そして他社が真似ようとしても到底真似のできない,或いは非常に時間が掛かってしか追いつくことができないものでなければならない。
これは私だけの危惧,取り越し苦労に済めばそれでよいが・・。

これも,会社とは? と考えさせられるのである。

 

一度,真剣に会社とは何か? 考えてみませんか。

現状の,社員と外部委託社員と一緒になった姿があるべき姿と思いますか?

 

[Reported by H.Nishimura 2007.10.01]


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