■会社とは? 2 (No.034)

これまでの会社生活をざっと振り返ったが,我々の世代は,会社は社員が支えている,会社は社員のために,教育から福利厚生などを充実させてと共存共栄だった。グローバルな競争時代に入り,環境が変わったとはいえ,経営は人がやるものである。つまり,人が大切であることには変わりがない。しかし,そうは思えない雰囲気を目の辺りにすることもしばしばある。

  アウトソーシングのあり方

全てを自社でできる時代は終わった。これまでは,自社で全てを賄う,或いは調達するやり方が一般的であったが,分業化が進み,得意な仕事をお互いがシェアすることが,専門的な部分に特化でき,お互いがメリットを出せる時代になった。昨今では,全てを自社内で賄う,或いは調達できる会社は大きな規模の会社では少なくなってきている。つまり,自社のコアコンピタンスをしっかり持った上で,残りの部分をアウトソーシングするようになってきている。特に,自社で付加価値が十分得られない仕事は,外に出すやり方が一般化してきている。

アウトソーシングは基本的には,次のようなものがある。
1.付加価値の少ない部分を外部委託
2.自社で不足する部分を補完(内部取り込み予定)
3.自社で不足する部分を協業(将来的にも協業)
4.オフショアアウトソーシング

1.付加価値の少ない部分を外部委託
これは明らかに,自社で取り込む付加価値が少なく,外部に委託した方がコストが安いといったケースである。特に,間接費用の肥大化は経営を圧迫しており,最近では,人事,経理,総務といった部門で外部委託が進んでいる。これは新入社員の採用そのものが,製造系では技術系を中心にしているとかになっていて,そうした部門に配属される人が居ない状態になっている。社員を雇うよりも,外部の専門会社へ任せた方がメリットがあるからである。本当にそうした部門は付加価値が低いのだろうか?
たとえば,昔は,人事部門の女性にちょっとしたことでも気軽に相談できたが,給料明細が外部委託先から送られてくるとなるといかにも事務的で,確かに効率は良いのかもしれないが,人情味は無い。昔から,人事は何かあれば他人事(ひとごと)と揶揄される部分はあったが,それよりもずっと味も素っ気もなくなっている。人のやる気,モチベーションをどのように考えているのか知りたいものである。そこに付加価値はなかったのだろうか?そんなこと,古い昔の名残り,との声が聞こえそうである。でも,血の通った人間が仕事をしていることを忘れないで欲しい。

会社組織を考えるとき,人事,経理,総務と云ったスタッフ部門は必要である。コストが安い,効率的だからと云う理由だけで無闇に外部委託するのは問題がある。それは,組織とはある目的を達成するために作られる。必要だから組織が作られるのであって,それがコミュニケーションも取れない,コントロールも効かない組織となってしまっては,組織として成り立たなくなってしまう。効率だけが優先され,同じ社員として,共同で同じ目的を目指す仲間意識が無い状態で果たして会社として上手く行くのだろうか。何だか,片肺飛行のようにも感じられる。短期的な目ではなく,長期的な展望も重要である。

アウトタスキングと言う言葉もある。「業務設計・管理責任などを自社で保持し,業務の実行部分だけを外部に委託する」ような形態を「アウトタスキング(out-tasking)」と呼ぶ場合がある。この語が登場する際「アウトソーシング」は,「業務設計・管理責任・業務実行のすべてを外部に委託する」形態をさす事になる。一般的には,両者を合わせて,広い意味で「アウトソーシング」と使っている場合が多い。

2.自社で不足する部分を補完(内部取り込み予定)
これは,自社のコア・コンピタンスを拡大するときなど,周辺技術拡大にはよく使われているやり方である。自社でできていない部分をやってもらい,そうした過程で自社の技術者が修得して取り込むのである。昔から,購入していた相手側の技術を受け継いで自社で「内製化」することが行われていた。そのためには,まず,会社としての方針があり,それに則って,相手側と十分な協議をし,納得してもらった上で実施に踏み切らねばならない。もちろん,ある程度の期間が必要であり,技術者をはじめとする受け容れ体制も整えなければならない。受け容れ側になったこともあるし,受け渡し側になったこともある。特に,受け渡し側になったときなど,設備もろとも技術移管をし,技術指導に1カ月程度,相手側の会社へ行ったこともある。もちろん,会社間の契約をきっちりやった上である。知財権の問題などもクリアにしておく必要がある。従来は,このタイプが多かった。

3.自社で不足する部分を協業(将来的にも協業)
これは,お互いの専門性を活かして協業する場合である。お互いが強いコア・コンピタンスを持っている場合,こうした形が取られる。つまり,すなわち自社が得意とする分野へ限られた経営資源を集中するためビジネスプロセスの中に積極的に外部資源を取り入れることを意味し,「高度な外部資源の利用」「固定費の変動費化」「柔軟な業務プロセスの確保」「業務変革の迅速化」「設備投資負担の軽減」などが目的となる場合である。

具体的には,セットメーカと部品メーカ間にもこうしたパートナーシップが形成される。昨今は,自社で全てやるのではなく,こうしたパートナーシップで協業体制をとるケースが増えている。また,エレクトロニクス産業のセットメーカーが製造部門を切り離し,EMS(electronics manufacturing service)事業者を利用するケースもある。スピードが求められ,しかも専門技術力が必要となる今日,ますますこのような形にならざるを得なくなってきている。ただし,このような協業では,一方が弱いと,取り込まれてしまうケースがある。

技術部門でも,これまでは技術補助的な部分で,外部委託の派遣社員が居たが,昨今ではかなりの部分まで外部委託しているケースが増えてきている。部門によれば外部の派遣社員の方が多いというケースも珍しくない。特に,ソフトウェアなどを扱っている部門では,全体をまとめるリーダは自社の社員だが,パートに分かれた部分は全て外部へ委託,それも社員同様に会社の中に入り込んで仕事をしている。請負,派遣と法律上の区分はあるものの殆ど社員と変わらない扱いである。

4.オフショアアウトソーシング
アウトソーシングのうち,受託企業が海外に存在するような形態のことを「オフショアアウトソーシング(offshore outsourcing)」と呼ぶ。「オフショアリング(offshoreing)」と言う場合もある。グローバル化しているので,最も適したところで業務をやるのがベターであることは間違いではない。デジタル化や標準化が進んでいるソフトウェア分野では,比較的インターフェースでのトラブルも少ない。確かに,技術仕様的にはそのようになっているが,やはり離れたところ,違う言語といった面で,コミュニケーションが悪くなることは否めない。そのことを十分配慮した上で,海外へ委託することにしないと,実際問題として大きなトラブルになることがある。

ソフトウェアのように,部分的にまるごと請負の形で外部委託するものは,デジタル化,標準化されている仕事であるからこうしたオフショアアウトソーシングが成り立つ。しかし,アナログ部分を扱っている部門ではそう簡単にはできない。なぜなら,きめ細かいノウハウがちりばめられていたり,インターフェース部分でのお互いの擦り合わせが常に不可欠であるからである。現状特に,ソフトウェアに代表される最近のグローバルな流れは加速しており,インドなどが注目されている。比較的優秀の人材が豊富であり,特に,アメリカがソフトウェアでインドを使うのは優秀な人材が多い上に,昼夜が逆なので24時間体制が採れるとも聞く。
日本からではそうした効果はでないが,日本からも各社が殺到しているようである。

 

以上,個々には特徴と,問題点も挙げたが,いずれの場合にも共通する問題点がある。
1.品質低下
2.セキュリティ問題
などである。これは,会社内としてコントロールが効かない部分である。こうしたことに対する考え方もしっかりさせておく必要がある。

品質ではやはり大きく依存するのは人にまつわる点である。機械が品質確保しているとはいえ,やはり最終的には人のモチベーション,モラルが品質を左右する部分がある。これは社内の風土・文化も大きく影響を及ぼす。当然,社員と外部委託社員とではやはり歴然とした違いが現れてくるのは当然である。必ずしも,外部委託社員が優秀ではないというのではなく,無意識にある品質意識というか,愛社精神と云った意識面が違うのである。

また,もう一方で,外部委託社員が増えるとセキュリティなどが厳しく云われるのは当然である。居室に入るのに物理的セキュリティを設けている会社も多いが,実質的にはカード一つで入門が可能になっており,それも同じように外部委託社員にも渡されている。そうしないと仕事ができないからである。これでは社員と外部委託社員と変わりは無い。結果,厳密なセキュリティが必要な部門以外は全く変わらない。このセキュリティも,人にまつわる問題である。コンプライアンスが叫ばれる今日ではあるが,実態は,社員以外の外部委託の人が,社内を社員と同様に,会社によっては,社員よりも多い人間が動き回ることを良しとしている。

本当に,会社とは? また,組織とは? 何をもって,どこまでのことを指すのか?形式上だけの違い(もちろん,給与などの実態面もあるが)で,区分されているが,この姿をどのように理解すべきか?これが会社として,組織として,あるべき姿なのだろうか,と考えさせられるのは私一人だろうか?

(続く)

あなたの会社のアウトソーシングの実態はどうですか?

社員と外部委託社員の区別がきっちりされていますか?名札だけでの区分ではありませんか?

 

[Reported by H.Nishimura 2007.09.24]


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