■再就職にチャレンジ 2 (No.027)

公開登録していると,人材銀行を通じて申し込みがあった。結果,採用不可だった内容について述べてみる。

人材銀行を通じて初めての紹介で,その企業は技術者の人材派遣業であった。連絡があったのは,派遣先の会社が示されていて,私の専門技術に関係する仕事だったが,通勤にも不便であったので,別なところを紹介してもらえるのなら面接に伺いますと連絡を取ったところ,一度面接に来て欲しい,とのことで伺った。

履歴書と職務経歴書を持参して,1次面接を受けた。面接員は30代後半とおぼしき女性一人であった。職務経歴に沿って,内容をざっと説明したが,面接員は受け答えはしっかりしているが,どれだけ私の職歴の中身が伝わっているか判らなかった。「いろいろ立派な仕事をされていたのですね」とか,一般的な答えで返ってくるが,30分余りの面接と,どんなスキルを持っているかのアンケート形式の質問を少し受けただけで終わった。

結果は,1次面接で不合格だった。何が悪かったと云う感覚もない。どんな人を求めようとしているのかさえ十分判らなかった。何を基準に採用を決めているのか,と不満もあった。でも,人材派遣業なんて,相手先が求めている人材と合わないことには,どんな優秀な技術力を持っていても,何の役にも立たないのである。まあ,今回のケースはそうだったのだろうと,諦めることにした。

見方を変えれば,私のような小生意気な知識やスキルは,人材派遣業には不必要なのである。優秀な労働力,作業者を最も良い技術者と見なしているのではないか。どんな企業にでもつぶしの効く,若い技術者が求められているようである。だからこそ,1次面接の面接員が,30代後半の女性一人でも十分できるのではないか。とは云え,こちらから探して申し込んだのではなく,公開している私の年齢も含めた求職公開書を見て,先方より声が掛かったのである。その理由を質すところまではしなかったが,何か良いところがあったのだろうか。同じように電子技術者で登録している人は,その人材銀行だけでも100人を超えている。私の場合,経営管理職でも登録していたがそれが影響した様子は全くない。

もう一つ,不採用になったケースがある。

38年振りに本格的な面接試験を受けた。紹介を受けた企業はベンチャー企業で伸び盛りの会社であった。もともとその会社へ入社したいと云う気持ちよりも,ベンチャー企業を覗いてみたい,と云うような気持ちの方が強く,面接を受け,質問をされながらも,この企業がどのようなものであるかを,応えながら考えていた。一方で,自分の持っているスキル・能力が,この会社で活かされるかどうかを探っていた。面接を受ける方がこんな態度だから,先方の面接員もたいへんだったに違いない。

産学協同などと云われているが,そのベンチャー企業は大学の先生が起業された会社で,未だ起業されて4年目の若い会社だった。まだ若いベンチャー企業だが,素晴らしい技術力があり,有名一流企業への製品の納入実績も多く,将来的に伸びる可能性のある企業であることは,予めホームページで調べておいた。小さい会社だったが,新しいビルの一区画,或いは,ワン・フロワーを使っているようで,セキュリティも万全だった。その一室で,先方の面接員は,総務・営業・技術(2名)の4名で,先ず,私の職務経歴に沿ってこれまでやってきたこと,スキル・能力などを説明するところから始まった。

先方の要求は,技術の第一線で部下指導,下請け会社の指導などをして欲しいと云うものだった。技術の面接員は各々,一流企業をスピンアウトした40代,50代と見られ,高周波技術関連のことがどれだけできるか,と云った技術的な内容の質問が主体であった。こちらは,管理業務は得意だが,第一線で設計の仕事をすることは,もうこれ以上やりたくない思いがあるのに,盛んに何とか第一線の仕事をして欲しいことを繰り返されて質問された。実際の仕事の内容が判らないので,想像でしかないが,私から見ると,面接員の技術者としての切れもそれほど感じず,技術者である社長が全てを切り回しておられるような印象だった。或いは,技術責任者が面接に慣れておられないためにそう云った印象をこちらが持ったのかも知れない。

盛んに,第一線の仕事もやればできるでしょう,と誘いを掛けられたが,こちらは,今更,第一線の仕事をするつもりはないと,きっぱり断った。総務・営業の2人は,60歳を超えておられ,これも有名一流企業から来られた人たちだった。こちらは,前の会社の話や,趣味など一般的な話が多かった。一般的な常識や性格を見ておられたようである。これには殆ど問題なかったと思われる。先方が求める技術者とは違っており,通常だったら,その時点で物別れで,採用不可のはずだったが,4人が相談され,最後に社長が出てこられた。

社長は40歳そこそこで,さすがに切れるオーラを持っておられ,「内容は伺いました。非常に優秀な方のように聞きました。言い難いことをズバリ聞きますが,我々中小企業では,マネジメントはもう少しすれば重要になり,非常に必要な人材なのですが,現状は,現場第一線の仕事をする人を求めています。マネジメントだけでなく,外注をコントロールしながら,自ら設計もすることを必要としています。それができますか?」と,切り込まれた。就職したい思いが強ければ,少々ごまかして,やってみます,と答えるものであるが,なぜかきっぱり,「第一線での設計をする自信がありません。しかも,一流企業相手であればそれなりの知識,経験,相手より優れた技術力がなければ,通用しないと思います。今からもう一度それはするつもりはありません」と答えた。

「やる自信と云うより,やる気があるかどうかが第一です。今回は,非常に残念ですね。」と云うのが,社長の出された結論だった。そうした言葉を聞きながら,不合格になったと云う気持ちではなく,ベンチャー企業とは,そんなゆとりなど持っていないんだ,と冷静に見ている自分がそこに居た。一方,社長の歯切れの良さを目の辺りにすると,面接員の4人の不甲斐なさのようなものが印象として残ってしまった。大企業でどれだけ活躍されてきたのか,私には全く判らない。あるいは,どんな理由で,このベンチャー企業に居られるのかも知らない。しかし,面接する側が,私のような一介の技術者にそのように思われること事態,何なんだろうか?ベンチャー企業で本当に社長が考えてるような働きができているのだろうか?

一般に大企業で働いていた人は,中小企業の厳しい中では通用しないとも云われる。それは組織の上で仕事をしていた人が,組織よりも自分のスキルで仕事をしなければならないから,その切換ができないか,或いは世間に通用するだけのスキルではなかったのだろう。今回はこのベンチャー企業で働くことにはならなかったが,実際,僅かな面接の小一時間足らずであったが,面接を通じてそんな思いをヒシヒシと感じさせられた。

とにかく,ベンチャー企業の一面を窺い知れたことは,私の新しい経験として何らかのプラスになるだろう,と思いながら,その会社を後にした。

(続く)

再就職活動は,今までの世界と違った新たな経験ができるものである。

ベンチャー企業の厳しさを目の辺りにして!!

 

[Reported by H.Nishimura 2007.08.06]


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