■環境問題を考える 2 (No.016)
「不都合な真実」の環境問題を真っ向から対抗する書物がベストセラーになっている。
◆「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」
この書物は,名古屋大学の武田教授(現在は,中部大学)が,環境問題の「故意の誤報」に対して,技術者として「事実を知り」それを基に,正しい判断をすべきであると,警鐘を鳴らされているものである。以下に,主なポイントを列挙してみる。
リサイクルの罠
ペットボトルのリサイクルは,日本全国どこでも行われており,「環境問題」に対する代表的な行動の一つであるが,これが実は環境に優しくないのである。それは,ペットボトルが未回収だった平成5年では,ペットボトルの消費が12万トンだった。それが10年経った平成16年では51万トンに増加しており,分別回収されている量が24万トン。しかし,実際にリサイクルされているのは3万トンしかない。つまり,この10年間で,ペットボトルの消費量は4倍((51−3)/12)にもなっているのである。
しかも,これに石油を使うのだが,1本のペットボトルを作るのにその2倍の石油を使い,リサイクルするには3.5倍の石油を使う。これを計算すると,51*2=102 24*3.5=84 これに運搬や施設で2万トン必要なので,総計188万トンである。これも最終的にはゴミとなる。平成5年当時の石油消費は,12*2=24だから,石油消費量で7倍である。
リサイクルした結果,ゴミも増え,資源(石油)消費も増えるという「環境問題」の目指す方向とは逆行した結果になっている。
なぜ,このようなことになってしまったのか,その理由は,三つあるという。
- リサイクルと言わないとお金が来ない
- リサイクルすると言って法律までつくり,国民に分別させているのに,今更リサイクルはダメと言えない
- リサイクルすると云って国民に分別させて業者に渡してしまえば,その後捨てても「産業廃棄物」になるからお役所の責任ではない
このことから,自治体は助かり,業者は潤う一方,国民だけが分別して,税金を払うことになる。このリサイクルによる費用負担分は全国で700億円に及ぶと計算されている。国民が望んでいる環境の改善と云う問題を私物化し,それによって収益を得ようとする日本の社会構造こそが問題である。
ダイオキシン騒動
ダイオキシンについても,大きく報道され,猛毒である印象が強いが,「人に対して毒性も持つかはっきりしていない。強い発ガン性を持っているとは思われない」との専門家の見解もある。
実は,ダイオキシンは日本では新聞報道がなされた1983年以降よりも,ずっと前1970年頃の方が,ダイオキシンの総量は多く,水田の除草剤として散布されていた。つまり,ダイオキシンが含まれたお米を長期間食べていたのである。アメリカがベトナムに枯葉剤として散布したよりも,日本の水田のダイオキシンの方が約8倍にも相当するのである。
ダイオキシンの生成条件は,有機物があり,塩素などハロゲン系があり,300〜500℃の高温が必要である。木材やプラスチックが燃える温度である。焼鳥屋などはこの条件にピッタリである。しかし,焼鳥屋がダイオキシンの患者になったとは聞かない。ダイオキシンは微量ならば殆ど問題にならないほど無毒なのである。
ダイオキシンは魔女狩りの魔女に仕立て上げられたようなものである。ダイオキシンの対策に国は1995年から毎年600〜1800億円もの税金を使ってきた。このつけは,消費者が負担しているのである。
故意の誤報
地球温暖化騒ぎの元となったのは,1984年元旦の朝日新聞の記事である。今後50年間で3度気温が上がり,東京が水浸しになり遷都しなければならないと云うものである。1984年までの50年間に上昇した温度が0.2度なのに,その後の50年で15倍も上がる計算になる。(これを読みながら,最近,地球温暖化で子供の膝まで海面が上がった様子や,病院の赤ん坊のベッドが海水面に浸っているTVの映像を,朝日新聞が広告しているが,環境の大切さを訴えるには,何か行き過ぎ,何を意図しているのか,と疑いたくなるように感じてしまった次第である。)
北極の氷が溶けて海面が上がるという記事もあるが,これも明らかな間違いである。北極の氷は海水面に浮いているので,アルキメデスの原理から,溶けても水面は変わらないのは自明の理である。南極の氷も全部溶けると海水面が60mも上がると云う。それだけ多いと云う表現では正しいが,周りの温度が上昇すれば,零度以下の状態では霜や氷になり,南極の氷は若干ではあるが増えることになる。
マスコミは,このような「故意の誤報」があっても,外部から圧力が掛かっていて,それでよしとしているところがある。本来は理想に燃えて,みんなで解決努力すべき環境問題なのに,なぜ「故意の誤報」が相次ぐのか? それはおそらく,「環境がお金になる」からである。
森林が二酸化炭素を吸収するので植林が叫ばれるが,これも誤りがある。樹木は確かに成長するときは,二酸化炭素を吸収して光合成を行うが,それは成長期のことである。成長が止まれば,光合成もなくなり,やがては老木として朽ち果てる。このとき,微生物に分解されるが,空気中の酸素と結合して再び二酸化炭素になる。つまり,樹木の一生では二酸化炭素は増えも減りもせず,トントンなのである。
ヨーロッパでは樹木の二酸化炭素吸収の論理は破綻しており,京都議定書の対策の一つに入れるのに反対したが,日本が強硬に要求したので入ったという経緯があると云われている。
本当の環境問題とは
著者は,日本人は公害問題以来,「環境トラウマ」に陥っている,と云う。現在の日本の大気は,実はかなりきれいな状態に戻っている。本当の環境問題は世間で騒がれているものよりも,次の3点であると主張している。
- 石油が枯渇すること
- 食料自給問題
- 「安全」に関すること
著者 武田教授のホームページがあるので,もっと詳細を知りたい人はこれを見ると良い。
(続く)
「環境問題」に関する真っ向から対立する書物,あなたは何を信じますか?
技術者として「環境問題」にどのように取り組みますか?
[Reported by H.Nishimura 2007.05.17]
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